【クェン酸の映画】酷評の『ドラゴンクエスト ~YOUR STORY~』を劇場で観てみた。苦言と見所をまとめます【ネタバレ有り】
『ドラゴンクエスト ~YOUR STORY~』
映画だからこそ実現できた『ドラゴンクエスト』
新たな冒険の扉がこの夏、開く――
君を、生きろ。
というワケで、今回は『ドラゴンクエスト ~YOUR STORY~』を劇場にて鑑賞してきました。
色々と酷評を呼んでいる本作品ですが、クェン酸的に総じて評価するならば
面白かったですよ♪
ただし、酷評し苦言を呈する人たちの意見もすごくよく分かります。今回はその辺りをネタバレ含めて書き綴ってみようかと思います。
まだ『ドラゴンクエスト ~YOUR STORY~』を観ていなくて、その内容に期待している方たちは鑑賞後にこの記事を読んで頂けると良いかと思います。
ネタバレ上等!という方は僕と一緒に『YOUR STORY』を紐解いていきましょう。
まず、今回の『ドラゴンクエスト ~YOUR STORY~』を語る前身としてあるのは『ドラゴンクエストV ~天空の花嫁~』
『ドラゴンクエストV ~天空の花嫁~』(発売元:エニックス)は1992年に当時まだ普及して間もないスーパーファミコン(SFC)にて発表されたロールプレイングゲーム。累計 約280万本を売り上げ、当時のドラクエの常識を覆す「結婚システム」を導入しプレイする子供たちをビアンカ派とフローラ派に二分させ、未だにその論争に決着はついていません。(クェン酸はビアンカ派のちにデボラ派になるか悩む)
『ドラクエV』はそれまでの「主人公は勇者、勇者は諸悪の根源である魔王を倒す」というドラクエ観を覆し「親から子、そしてその先に連なる命の連鎖」を主題に「冒険という、もうひとつの人生」を描いた物語。
それまでの四作品(ドラクエⅠ~Ⅳ)の内、Ⅰ~Ⅲまでは『勇者ロトの伝説』なのに対して、ⅣとこのⅤ、そしてⅥに関しては『天空人にまつわる伝説』になっており、ゲーム中においても今回の映画にしても「天空のつるぎ」が重要なキーアイテムとして登場します。ⅣをプレイしたプレイヤーはⅤにて再登場することになった「天空のつるぎ」を見て心躍ったことでしょう(僕がそうです)。
そういう意味では「天空のつるぎ」が天空人の血脈の物語を示唆し、命の連鎖というドラマを演出します。
苦言ポイントその1
【主人公の名前を無断使用と変更】
今回の『ドラゴンクエスト ~YOUR STORY~』の主人公の名前は「リュカ」
この「リュカ」という名前は小説『ドラゴンクエストV ~天空の花嫁~』(全三巻 久美沙織 著)の主人公の名前として使われています。何度も読み返すほど小説版が好きだったクェン酸としては「おお~!映画版も『リュカ』なんだ」と喜んだものですが、残念なことに原作者である久美沙織先生の了解を得ずに使用してしまっていること。
小説版は「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア(呼称:リュカ)」
映画版は「リュカ・エル・ケル・グランバニア」
ファーストネームの差異はあるものの参照していることは明らか、にも関わらず「リュカ」使用の連絡は原作者である久美沙織先生の元にはいかず、あまつさえドラクエⅤの映画を制作するという話さえ先生はテレビの報道で知ったとコメントしています。実際、最後のスタッフロールに久美沙織先生の名前は出てきませんでした。
2019年8月2日時点で、久美沙織先生は無断で『リュカ』の名前を変更されたとして長野地方裁判所に製作委員会を「著作人格権侵害」で提訴しています。対してスクエア・エニックス側の代理弁護人は『「リュカ」は著作物ではないから許諾不要、連絡不要、よって著作物の二次使用ではないから交渉委任も不要』と反論。現時点でどのように対処されるのかは不明とのこと。
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実際、小説と映画を楽しんだ立場から言うと「リュケイロム」と「リュカ」は同じキャラクターでありながら似て非なる者です。
小説版の「リュケイロム」は幼少期から奴隷時代、青年期、父となったその後もどんな困難にも立ち向かう精神を持った人物であると感じるのに対して、映画版「リュカ」は場の空気に流されがちでどこか軽々とした性格を感じさせます。「リュカ」という同じ名前を用いながら性格の異なるキャラクターを使われてしまうと、僕のようなファン層は「これなら『リュカ』の名前を使って欲しくはないなぁ…」と思ってしまいます。
苦言ポイントその2
【山崎監督がドラクエⅤをプレイしていない】
今作の総監督は山崎貴監督。
『ALWAYS 三丁目の夕日』や『永遠の0』、『STAND BY ME ドラえもん』などを手掛けた日本映画におけるVFXの第一人者、天才と評されることも多い方です。2019年公開の『アルキメデスの対戦』は評価も高く「これぞ山崎貴!」という出来映えとなっています。
――――が、山崎貴監督。
「RPGが好きではなく、ドラクエⅤに関してもプレイしたことはない」とのこと
監督、それあかん。(笑)
言うなればセッ○スを知らん子供が日活でポルノ映画を作るようなものです。(私も作れませんが)
今作は『天空の花嫁』の凡そのストーリーを100分ほどの中に詰め込むという荒業を成している故に、かなり物語を端折っている部分が散見されます。
今でこそスタンダードですが、ドラクエⅤと言えば主人公が『魔物使い』という個性を発揮し、多種多様なモンスターを仲間にすることが出来るようになったシリーズ。
「結婚システム」と並び「仲間モンスター・システム」はドラクエⅤの大きな魅力。
しかし、映画中で仲間になるのはキラーパンサーのゲレゲレとスライムのスラリンのみ(残念)。あとゲームでは奴隷時代にマリアという女の子(のちにヘンリーと結婚)いたくだりもカットされており、クェン酸が個人的に大好きな「実はパパスが(グランバニア国の)王様で、リュカ(主人公)も身分を隠されていた王子」という設定が今回の作中で語られていないのが残念。
また結婚後に生まれる子供たちに関して言えば、ゲームでは双子(男の子と女の子)だったはずが、映画では天空の勇者である男の子ひとり(名前はアルス、ロト紋?)になってしまっています。
おそらくドラクエⅤをプレイした人であれば「それ絶対観たい!」という要素が、ここそこで欠落しています。
何でゲームと違うんだろうなぁ…?と思われた方の疑問はココで氷解します。
「ああ、総監督がドラクエⅤやってないから『愛』が足りないのね…」と。
苦言ポイントその3
【実は全部ゲーム体験のプレイヤーのお話】
今回の映画で一番の物議を醸すのはおそらくこの部分でしょう。山崎貴監督がこのドラクエⅤの映画化を承諾するに踏み切った「すごいアイデア」がこれ。タイトルでもある『ドラゴンクエスト ~YOUR STORY~』のユア・ストーリーな部分。
ここからガッツリとネタバレです。
逃げる人は今のうち。
物語の終盤、長年の宿敵であったゲマを倒したリュカたち。ゲマは滅びゆくその身にマーサ(主人公の母親)の持つ力を吸収し「魔王ミルドラース」を封じていた魔界の門の解放します。渦巻く大気、押し寄せる魔王の気配。一度、解き放たれた魔界の門を封じるためには勇者のみが振るうことが出来る「天空のつるぎ」をその魔界の門の中心に投げ込むしかありません。アルスの渾身の力を以て投げられた剣はミルドラースを世界に呼び込もうとする渦巻く雲を穿ったように見えた瞬間。
――――世界が止まる。リュカを除いて
そして現れたのは魔王ミルドラース――ではなく謎の表情のない存在。
それは自らを「ウイルス」と名乗ります。
「この世界の真実を見せましょう」と言い放ったそれは「マッピング」「グラビティ」等、次々とデータコードを解除していきます。
そして「ウイルス」はリュカに思い出させます。
リュカは勇者ではない。
パパスの息子でもない。
それどころかドラゴンクエストの中に生きてすらいない。
ただの「仕事に疲れたドラクエが好きなサラリーマン」だった。
この瞬間、ウチの子供たち表情が氏にました。(笑)
結論から言うと、この『ドラゴンクエスト ~YOUR STORY~』は今の子供を対象とした映画ではなく、ドラクエⅤをリアルタイムでプレイしていた『アナタの為の映画(YOUR STORY)』なワケです。
それ先に言わなあかんわw
ウチもそうですが、この映画を観に来る層というのは基本的に「ドラクエが好きな子供」と「ドラクエが好きだった元子供」なワケです。山崎貴監督が思いついた「ラスト10分のすごいアイデア」は後者には画期的ですが、前者にはただの世界の崩壊(汗)。
この映画を観た子供の中には、このラストで傷ついてドラクエが嫌いになってしまった子もいるのだとか。
そういう子供たちへの影響の配慮は何かできなかったのか、例えば『ドラクエを愛した少年たちに送る』的なキャッチコピーで示唆するなど。
そうすれば、もう少し世間の風当たりも変わったんじゃないかなあと思わなくもないのです。(R指定かけるとか)
――――と、まあ以上。
クェン酸的な苦言を呈してみたわけですが、
ここからは『ドラゴンクエスト ~YOUR STORY~』の良いところ。
すなわち見所をご紹介したいと思います。
というか、冒頭にも表記しましたが、僕はこの『ドラゴンクエスト ~YOUR STORY~』がとても面白かったと思っている一人なのでちゃんとこの映画の魅力も知って欲しい。多くのレビューで酷評されていますが、きっとそれはこの映画を観る視点の違いからだったのではないかと思います。
YOURポイントその1
【ドラクエⅤの世界観と圧倒的3DCGの映像美!】
これは映画の予告編を目にした時点でわかることですが、3DCGによるドラクエⅤの世界の構築が掛け値なく素晴らしい。
さすがは山崎貴監督の一言に尽きます。雪の冷たさや家、城の堅牢さ、その現実味は言うに及ばず、主人公がキラーパンサー(ゲレゲレ)と抱擁するその毛皮やスライム(スラリン)ぷゆんぷゆんした質感。それは間違いなくプレイしていた当時に自分の中で思い描いていたそれそのもの。
初めて見る映像なのに、なぜか懐かしいと感じてしまうのは我々の中にこの世界が存在していたからに相違ないと僕は思います。
手を伸ばせば触れられるような、本当にそこにあるかのような臨場感。
VR技術が急速に発達している今なら、この世界に渡りつく日もそう遠くはないのかもしれません。今はまだ2Dのスクリーンの向こう側ですが。おそらく今後、DVD・BDなどのコンテンツで販売されるかと思いますが可能な限り映画に近い高画質でご覧頂きたい。
山崎貴監督のこだわりとドラクエ世界の融合の妙味を体感していただけるかと思います。珠玉の映像美を是非ご堪能してみてください。
YOURポイントその2
【鮮やかに散りばめられた伏線と見え隠れする裏設定】
正直なところドラクエⅤという物語は数あるシリーズの中でもストーリー性が非常に豊かな作品。それを主題にした今回のこの映画、通常プレイに30~40時間かかる壮大な物語をどうやって100分ほどのフィルムの中に収めるのか?というのが僕の中に興味としてありました。
すべてのエピソードを踏襲すれば時間が足りるわけもないし、カットし過ぎればそれは物語として非常に薄っぺらいものになる。重要なのは必要な伏線をいかに無駄なく散りばめ回収するかという点であったのではないかと思います。
伏線は冒頭より至るところに用意されています。おそらく初見ですべての伏線を看破できる人は数えるほどでしょう。
何よりこの映画は『ドラクエⅤをプレイしたことのある大人』をターゲットに製作されている物語、ストーリーは若干早めに、伏線は気持ち難しめに設定されています。それだけに2Dの懐かしいゲーム画面が開幕とともに映し出された瞬間『その手があったか!』とその手法の大胆さに観客は心躍らせることと思います。
さらに作中では語られない部分で裏設定が仕掛けられているのでは?という点を鑑賞しながら感じました。
僕自身が隠された設定を感じたのは『剣技』。
父パパス、息子リュカ、そして孫に当たるアルス。彼らは語られない部分ではありますがグランバニア国の王族の血筋。
その剣技はグランバニア流の剣技ということになりますが、幼少期における戦いの際にパパスが見せる回転斬り、これが青年期のリュカが塔を登る際にオークを倒してみせた剣技に一瞬「おやっ?」となります。そして石化後にアルスが敵を一掃する回転斬りを見せたとき、そこに彼らの剣の中にある王国の歴史を垣間見ることが出来ます。
この見立てが当たっているのならばなかなか心憎い演出、他にもドラクエⅤを知っている人だけが気づくことの出来る裏設定が隠されているのかもしれません。
YOURポイントその3
【これはドラクエⅤという名を借りた、本当のあなたの『ユア・ストーリー』】
昔、寝るのも忘れてゲームした。
食事を摂るのも惜しんでゲームした。
親に隠れながら、怒られるのを承知でゲームした。(笑)
ゲームは胸の熱くなるような興奮と数限りない発見と矜恃を私たちにくれました。
少なからずその経験は、今の私たちを形作る土台の一つとなってはいないでしょうか。
結論、この映画『ドラゴンクエスト ~YOUR STORY~』は小さい子供さんたちへ向けられた映画ではなく、『ゲームによって育まれたすべての人(大人)』であると解釈すると全体の構成ごとストンと胸に落ちてきます。なまじ「ドラクエ」という今の子供にも人気のあるコンテンツなだけに皆が「これは子供の為の映画だ」と思い込んでしまったところに今回の世の中の酷評の一端があるように思えました。
実際、映画を見た人の中には最後のどんでん返しは衝撃だったけど面白かったよ、という声もしっかり聞きます。
この『ドラゴンクエスト ~YOUR STORY~』は他の誰でもないゲームをこよなく愛し、ゲームによって育ったあなたの物語。
物語のクライマックス『ウイルス』は語ります。
『大人になれよ』
『なぜ、そこまでしてこの世界にしがみつくのだ』と
主人公は語ります。
『子供の頃からずっと…僕にとってゲームの世界は決して「嘘」の世界じゃなかった!』
『全部、ここ(胸)に残っている! これは「もうひとつの現実」だ!』
この台詞を聞いたとき、自然と瞳に涙が溢れました。
そうなんです。
僕らにとってゲームの世界は遊び場であり、学びの場であり、友達と話題を共有できるコミュニティーであり、憧れや恋心、憤怒や悲愴そういったものをひっくるめた「もうひとつの世界」でした。
それはプレイから数十年経った今も変わらず心の奥の方に鎮座しています。
「ゲームなんてやってたらいい大人になれない」
「何の役に立つの? ゲームなんて。さっさと勉強しなさい」
何度、親に言われたことでしょう。
100回? いや200回それ以上?
そういう側面があるのは子供だって理解しています。(ある程度)
でもあの時、ゲームを通して感じた感動や、言葉に出来ない新しい気持ち。そういったものをひっくるめて教えてくれたのは紛れもないゲームの世界でした。
クライマックスの主人公の言葉はそんな時代に生きた人間への肯定の言葉。日常に疲れ、ただ目の前の仕事・勉強・家事・育児を盲目的に繰り返すだけの日々を送る我々に、明日に踏み出す一歩の力をくれる言葉です。
ドラクエⅤに熱中した世代の方はあの頃を覚えておられるでしょうか。
十代の頃出会った、あの興奮に優るものを見つけられたでしょうか。
あなたの冒険は成し遂げられたでしょうか。
冒険は死ぬまで続きます。
いえ死んだって続きます。立ち止まらない限り。
もし、その気持ちを忘れてしまいそうになっていたら。
是非、この映画を観てください。
ゲーム?何それ?
やった事ないから判りません。
ああ…私の最速装備を育てる軍資金を稼ぐ為に、
秘書兼電話受付に扮して会社人コスを纏うゲームしてたかw
なかなかゲーム内通貨(yen)が貯まらないんよねー
この世界はクソゲーやからね(笑)
しかも『物欲』とゆー余計なステがあるおかげで尚更ゲーム内通貨が貯まらんとゆー鬼がかった仕様になっておる。
もうしばらく頑張って、しっかり社会人コスしてなさい♡
|´-`)チラッ
スラリンはレベル99で灼熱の炎吐きながらはぐれメタルの剣持って魔王を倒したのだ!! (約30年前のマイストーリーw)
僕はレベル50ぐらいでスラリンの育成を諦めてしまったクチw
灼熱の炎吐くまでスライムに愛を注いだぬしさんに乾杯。
スライムのあの容積で炎吐いたら蒸発するとこしか想像できまてん(笑)
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